創業1845年
歴史を刻む醸造場

太田家は代々「與八郎(よはちろう)」を襲名してきました。奥州一宮として全国の崇敬を集めた鹽竈神社の門前に店を構え、旅籠屋を営んできました。四代目のとき、旅籠屋のかたわら味噌醤油の醸造業をはじめました。これが創業、江戸時代後期の1845年(弘化2年)のことでした。店の名は「太田與八郎商店」。以来「太田屋」の屋号で親しまれて170余年、永いときを塩竈のまちと人と共に生きてきました。

太田與八郎商店のシンボルマークである「イゲタヨ印」は、その創業のときにつくられたもの。「良い仕込み水に恵まれ、品質の向上が図られること」を願って、井戸の井桁(イゲタ)の中央に、名前の一字「與(与)」を取り入れたものです。創業の想いを受け継ぎ、これからもこの塩竈のまちで、品質の高い味噌醤油づくりをつづけていきます。

鹽竈神社の懐で
塩竈のまちと共に

味噌醤油醸造元となった太田與八郎商店が鹽竈神社から現在の場所へ移転したのは1889年(明治22年)ごろのこと。現在の蔵は大正14年に、現在の店舗は昭和4年に建て替えられたものです。塩竈のまちにふさわしい永い歴史を感じさせる美しい建築物として、1993年(平成5年)に塩竈市文化景観賞を受賞しました。

塩竈市は杜の都・仙台の東に位置する、東北有数の港町。その中心的な存在となっているのが鹽竈神社です。地元で「しおがまさま」と愛されるこの神社は、陸奥国の一之宮として絶大な信仰を集め、江戸時代には伊達家の厚い崇敬を受けた格式高い神社です。ここに祀られている3柱の神のうち、鹽土老翁神は、人々に塩づくりを教えた神と言われています。

塩竈のまちの繁栄は鹽竈神社あってのものでした。私たち太田屋もまた、この「しおがまさま」あってのもの。そしてまた塩竈のまちがあってのもの。これからも、この素晴らしいまち、新鮮な魚介や素材にも恵まれたまち、ひとが優しいまちの醸造元として精進してまいります。

店主/太田真

1969年山形県生まれ。東北学院大学卒業後、様々な職を経験したのち結婚を機に太田與八郎商店に入り現在に至る。製造から販売まで日々醸造の仕事に携わり、現在も伝統食と発酵文化を広めるため醸造家として奮闘中。